【感想】小説「夏への扉」

ハインラインのタイムトラベルSF小説を読み終えました。

非常に有名なこの小説、実は読んだことなかったんですよね。なんで読む気になったかというと山﨑賢人主演で2021年に設定を日本に変えて実写映画化されるというニュースを見たので。特に山﨑賢人のファンというわけではないんですが、2019年に公開した映画「キングダム」で主人公を演じていたのがものすごく印象に残ってるのでちょっと注目してるんですよね。どちらかというとナイーブなイケメンキャラを多く演じてるようですが個人的にはああいうワイルドな役のほうが合ってると思ってます。

さて読んだ理由は上に書いた通りですが、では「なぜこれまで読まなかったのか」となるわけで。名作だからといってなんでもかんでも読んでるわけではありませんが日本のSFファンからの人気もものすごく高いのは知ってるので普通なら読んでるはず。しかし今回表紙を見てようやく思い出しました。そうか、「猫が表紙」だから読んでなかったのかと(笑)。
別に猫嫌いとかではないんですがペットとしての犬や猫にはまるで興味がないのでSFと猫とか言われても心惹かれるものがまるでなかったんですよね。そんなわけでスルーしてたと。昔飼ってたのはハムスターくらいですからねー。あ、だから「アルジャーノンに花束を」は抵抗なく読めたのか。アルジャーノンはハムスターではなくハツカネズミですけど。


さて、そんな自分自身のことを思い出しつつついに読破。
まず本文の前の「おもな登場人物」紹介でだまされましたね(笑)。主人公の友人にして仕事上のパートナー、マイルズ。婚約者のベル。確かに嘘は書いてないんですけどその前提で読んでいくと驚かされる。
時代は1970年。原作は1956年に出たそうなので14年後の未来を描いてるんですね。発明家にして優秀な技術者のダンはその二人に騙されて自分の会社を奪われてしまうという衝撃の展開。やけくそでコールドスリープを使って30年後の未来で目覚める決意をしたものの最後に二人にちょっとは仕返しをしてやろうとマイルズの家に赴いたらまたもベルにしてやられてしまう。洗脳状態にする注射を打たれてさらに全てを奪われた挙句にコールドスリープに送られる。
この前半はダンが間抜けすぎるというか人を信じすぎるというか、頭は良くても子供っぽくてお人よしなところが裏目に出てた感じですね。飼い猫にして相棒のピートと一緒にコールドスリープするはずがベルによって引き離されてしまい孤独に一人で2000年へと旅立つことに。前半はやられっぱなしの展開にわりとストレスがたまりました。

そして後半。面白かったのはコールドスリープを「タイムトラベルの一つの形」として扱ってたことですね。個人的にはコールドスリープというと長期間の宇宙への探索とか未来へ何らかのメッセージを伝えるためとかの使命を帯びての行動というものを普通は連想してたので。あるいは未来の世界で不治の病を治したり不老不死になるためとか。しかし考えてみればたしかにコールドスリープもタイムトラベルということになりますよね。そのへんはちょっと意表をつかれて面白かった。

2000年の未来に来たダンは適応に時間がかかったもののやはり優秀な頭脳の持ち主だけあって様々な知識を吸収していく。そんな中で彼の唯一の希望は自分の株を譲渡して幸せを願っていたマイルズのかつての妻の連れ子・リッキー。30歳のダンは生きていれば41歳になってるはずの彼女と結婚出来れば、なんて思ってもいたわけで。このリッキーの本名は「フレデリカ」なんですが、この名前を聞くとどうしても銀河英雄伝説を思い出しますよね(笑)。作者の田中芳樹がこの小説を読んでないとは思えないので名前の元ネタはここからなのかも。当人も「夏の魔術」なんて小説も書いてますしね。
いずれにせよ11歳のリッキーから情熱を向けられていたことは知っていたダンは彼女の捜索もしつつ、自分をハメたベルとマイルズに「復讐」というほどだいそれたものではない仕返しを考えてたものの実際に年老いて落ちぶれたベルに出会うとその気も失せたようで。正直、過去に二度も騙されてるベルの家に単独で出向いたときはまたやられるんじゃないかとちょっと読んでて心配になりましたけどね(笑)。

さて、2000年の未来世界でダンは自分と似た名前の技術者が1970年に自分が考えていた設計を実現していることを知ったり、ベルが過去に自分に反撃されて破滅させられたようなことを言ってたりとなにやらおかしなことに気が付く。このへんからミステリー要素的な部分も出てきますね。
ダンはタイムトラベルの技術を実現させたトウィッチェル博士の存在を知り、うまく彼を誘導して1970年より少し前の過去に戻ることに成功。昔の小説ってわりと21世紀にタイムトラベルの技術が完成しているような話がありますけど、これってほんとうにこのころには可能になってると思ってたのかな。それともただのファンタジーとして書いてたのか。そのへんも興味ありますねー。21世紀初頭にはとっくに太陽系内への宇宙旅行が可能になっているとは思われてたようですがいまだに月面旅行しか無理なのが現実だったりしますしね。意外と昔の人の想像したほど科学技術は進歩してない。

そして過去に戻ってからはかつての失敗を帳消しにすべく活動を開始するダン。過去に自分と似た人間と思っていたのはタイムトラベルしてきた自分自身だったんですね。そして前半はひどい相手とばかり知り合ってましたが今度は彼の善良さが報われる相手と出会えたのが幸運でしたねー。弁護士のジョンとジェニー夫妻が悪人だったらまたひどい目にあわされてたはず。こうして彼は全てをやり遂げ、リッキーとは2000年の未来で再会する約束をして再びコールドスリープへ。今度はちゃんとピートと一緒に。
最後は21歳の時に同じくコールドスリープをして彼との再会を待っていたリッキーと結ばれてハッピーエンド!
後味のいい終わりで本当に良かった(笑)。


というわけで読み終えましたが、タイムトラベルを扱ってたわりに何か世界の大きな変化とかに関係するのではなく個人のささやかな幸せにつながるだけの話というのも意外ではありますが面白かった。これで実写映画のほうも楽しみになりましたね。舞台を日本にして1995年と2025年を行き来するそうですがコールドスリープはどうするんだろう。1995年にも2020年の今でもそんなもの実現してませんしねー。まあ存在する世界ということにしておけば良さそうですが。
そのへんも含めて来年の公開が楽しみです。


夏への扉[新訳版] - ロバート・A・ハインライン, 小尾芙佐
夏への扉[新訳版] - ロバート・A・ハインライン, 小尾芙佐

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント