【感想】小説「三体」

話題になっている中国SF小説第1部、ようやく読むことができました。

たぶん昨年からだったと思いますが、この中国のSF作家が書いたという「三体」がけっこう話題になってたんですよね。最近は図書館で本を借りることが増えたので「そんなに面白いならちょっと読んでみようかな」と思い予約することに。しかし順番待ちが100人以上で人気の高さがそれだけでもわかりました。で、予約してからなんと10ヶ月も経ってようやく読めることに(笑)。一時期、図書館自体が緊急事態宣言の影響で動いてなかったのでそれがなければあと一ヶ月くらいは早く読めたかもしれませんけどね。こんなに遅くなるなら買ってもいい気もしましたが、まあ普段そこまでSF小説を読むわけではないしここまで待ってしまいました。


というわけで読み始めましたが、いきなり冒頭では1967年の中国・文化大革命の狂乱からスタート。文革に関してはあまり知らなくて知識人がつるし上げを喰らって殺されまくったとかそのくらいしか知らなかったんですが、その様子が描写されることに。後の天体物理学者・葉文潔の父が母によって公衆の前で糾弾されて暴行されて死亡する展開。物理学者であるということ自体が罪となってたんですねー。思い込みと極端な正義感から他社の価値観を認めず迫害する。中国に限らず日本やアメリカなどの西洋諸国でも普通に起きたことであり現代でも笑い話ではないですよね。
葉文潔は二年後にさらに罠にはめられて絶望を重ねたのちに中国の極秘プロジェクト「紅岸」に参加することに。まだこの時点ではこの葉文潔の物語がどう本筋にかかわるのかまるでわからなかったわけですが。

それからこの作品の登場人物は当然ほとんど中国人なのですが、人物紹介では中国読みと日本語読みが併記されてました。葉文潔なら(イエ・ウェンジェ/よう・ぶんけつ)という感じに。最初はこれを見た時、「中国読みだけでいいだろうになんでわざわざ日本語読みまで」と思いましたがすぐに考えを改めました。読んでで頭の中で次々出てくる人物の漢字名を変換するときに中国読みだとものすごく覚えづらい。なまじ漢字だからそうなってしまうんでしょうね。というわけでふつうに「よう・ぶんけつ」と読むことにしました。

そしてそれから40数年後、つまり2010年前後ということになるのかな。この小説の主人公・ナノマテリアル開発者の汪淼(ワン・ミャオ/おう・びょう)が科学者が何人も死に始めた事件について関わることに。その中でVRゲーム「三体」をプレイすることになるわけですがこの辺の描写は正直よくわからずになんとなく読み進めて行く感じでした。三つの太陽がある三体文明の世界で人は「脱水」という体の水分を出し切って皮だけになる手段で灼熱の時期を乗り越えながら文明が滅びを繰り返していくわけですが。中国の歴史上の人物とか有名な物理学者とかがNPC(ノンプレイヤーキャラクター)として登場して話に入りやすくなってるとは言っても、「いったいこの話で何を語りたいんだ?」という疑問だけでちょっと読み進める手も遅くなっていきました。この小説が何の話なのかよくわからないというのが一番の理由ですね。
科学者たちの死、汪淼にのみ見える謎のカウントダウン、いろいろと謎だらけで話が進んでいくわけですが。

しかし物語が大きく動く事件が過去に起きていたことが判明。1979年あたりのようですが、宇宙に生存するかもしれない未知の異星人に向けてメッセージを送り続ける「紅岸プロジェクト」の研究員となっていた葉文潔は宇宙からの返信を偶然受け取る。それは警告で、彼らからのメッセージに応答すれば地球の位置は特定されてしまい侵略される。ゆえに応答するなというもの。異星人にもそういう人間がいるんだと読んでるこちらが喜びかけたところで葉文潔が返信を。
「来て! この世界の征服に手を貸してあげる。わたしたちの文明は、もう自分で自分の問題を解決できない。だから、あなたたちの力に介入してもらう必要がある。」

ここを読んだときは声にこそ出さなかったものの、脳内で思わず叫んでしまいましたよ。

「なんてことしてくれるんじゃあ、この女はぁぁぁぁぁぁぁ!」

って(笑)。いやー、ようやくこの小説がどういう話なのか理解。異星人の侵略とそれに対する人類の戦いを描くんですねー。葉文潔が絶望していく描写はこのためだったのか。ここまで描かれてきた三体文明の描写とかも全部頭の中で噛み合ったというか。VRゲーム「三体」は現実の三体文明人の文明が滅びを繰り返しながら進化してきた世界を再現したものでそれを通して彼らの支配を受け入れる人間を増やしてくためのものだったんですねー。
三体人の艦隊が地球に到達するのは四百数十年後と判明。そのとき人類が対抗できる力がなければ出産を許されずに支配されることに。

葉文潔が総帥となっている三体人を地球に招き入れるための組織・地球三体協会、その中の派閥「降臨派」が所持する三体人からのメッセージをなんとか奪取するための作戦が決行されることになるわけですがこれが面白い。彼らのタンカー「ジャッジメント・ディ」からそのデータを奪取するわけですが彼らに消されないようにするためには気づかれる前に皆殺しにしないといけない。そこで問題行動だらけの警察官・史強のアイディアで極細のナノワイヤーをパナマ運河に張ってタンカーを通過と同時に人間ごと輪切りにしてしまおうという。残虐な作戦ではあるんですがちょっとわくわくしてしまったのも事実(笑)。小説の最初のほうに何気なく出てきた汪淼と史強の会話、それをこういう形で応用するとは。
それからこの史強、理性的なキャラばかりのこの小説にあって粗暴な不良警官といった印象ですがそのキャラにけっこう読んでて救われてたのも確かなんですよねー。出てくると何かやってくれそうで面白い。キャラ的な意味だけでなく頭がいいというか犯罪者と関わり続けてきたからか悪知恵がいろいろ働くのも人類の切り札になりそうな予感さえしますね(笑)。

あと侵略してくる三体人側も描写されるんですが、警告のメッセージを送ったのは平和主義者なんかではなくただの観測員でこのままだと仕事がなくなってしまうからというのも面白い(笑)。そして三体側が攻めるのを決断した理由も、地球の文明の進化速度が何度も滅亡を繰り返してようやく今の段階にたどり着いた自分たちに比べて急激すぎて、地球人がこのまま進化して自分たちを見つけたら攻めてくるに違いないからという。これに関しては実際否定できそうにないですからねー。人類には異なる文明を滅ぼしてきた前科もありますし。仮に三体人を見つけてそのとき地球人側の文明が上なら相手が進化しないうちに支配して監視しようとはきっとするでしょうしね。
しかも三体人は自分たちの艦隊が地球に到達するまでに地球人がそれを上回る科学技術を手にしないように仕掛けまで。これをどう打ち破るかもここからの鍵なんでしょうねー。


というわけで読み終えましたがもう一度読み返したら退屈に感じてた部分もものすごく楽しく思えるかも。三部作だそうでようやく第二部が日本語訳されたみたいですけど果たしてこれからどう展開するのか。第二部では100年くらい時間が経過してるのかな。いずれにしても続編も読んでみたいですねー!


三体 - 劉 慈欣, 大森 望, 光吉 さくら, ワン チャイ, 立原 透耶
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